インタビュー

30歳で独学でAIとプログラミングを学び、地球温暖化対策の研究者からエンジニアに転身した、とあるスーダン人のキャリアパス

皆さんこんにちは。突然ですが、エンジニアの皆さんは、プログラミングの学習したのはいつからですか?エンジニアとして生きるのならば、プログラミングの学習は早ければ早い程良いと言われていますが、実際にエンジニアとして活躍している人のバックグラウンドは様々です。

今回紹介するオメールさんは、スーダンで生まれ育ち、東京大学で地球温暖化の研究をしていたという異色の経歴を持つソフトウェアエンジニアです。30歳の時、独学でAIやプログラミングの勉強をしたオマールさんは、一年後、技術者として転身します。

常に新しい技術にキャッチアップしなければならないという職業柄を考えると、エンジニアにとって、学習を始める時期はあまり重要ではないのかもしれません。

今後ますますエンジニアのキャリパスが多様化していく中で、スーダン出身の秀才は、どのようにして短期間で多くの技術を習得し、どのようなキャリアパスを見据えているのでしょうか。

オマール・イスハグさん

スーダン生まれ。2012年に東京大学大学院の留学生として来日。地球温暖化対策の研究に従事。30歳時に、独学でプラグらミングとAIの勉強を始め、ソフトウェアエンジニアに転身。 以後、フロント、バック問わず様々なプロジェクトに参画。

はじめにオマールさんの経歴と日本に来たきっかけを教えてください。

スーダンで生まれ育った私は、奨学金を得てサウジアラビアの大学に留学しました。サウジアラビアでの生活は非常に快適だったのですが、スーダンとは文化的にも宗教的にも近しく、物足りなさを感じる日々でした。

くすぶる気持ちと共に、よりチャレンジングな環境に身を置きたいと考えるようになった折に、ちょうど日本への留学プログラムの奨学金を受けるチャンスがあったのです。

テストを受けた結果、パスできたので、サウジアラビアを離れ、2012年に来日し、東京大学大学院の佐藤増田研究室にて、地球温暖化対策の研究をする事になりました。

日本での暮らしはどのようなものでしたか?

実は、来日する前は日本に関する知識はほとんどなく、高性能の製品やアニメといった漠然としたイメージしかなかったのです(笑)。

私の生まれ育ったスーダンはイスラム教の国であり、人前で女性と手をつなぐ事もなく、お酒も飲まないので、始めはびっくりする事が沢山ありましたが、周囲のサポートもあって、生活面ではあまり困った事はありませんでした。

ただ、アカデミックの世界にいた時は、競争が激しくて結構きつかったですね(笑)。そもそも東大には頭が良くて勉強が好きな人しかいないので、周囲の期待するようなパフォーマンスを維持できるかは常に不安でした。スーダンでは、とりあえず頑張っていれば評価してもらえるので(笑)。

色々と苦労する事はありましたが、全体的に日本での暮らしは、予想よりもずっと良いもので、日本で働き続ける事に決めたのです。

地球温暖化対策の研究室からエンジニアに転身する事は一般的ではありませんが、どのような経緯があったのですか?

当時、地球温暖化対策の研究室に入った理由は、スーダンでは、この分野の専門家は高収入な職が保証されていたからです。

しかし、本音を言というと、温暖化対策の研究は、学問としてはあまり興味がある分野ではありませんでした。色々考えたのですが、自分があまり興味のない分野の専門家として長年働くのは、良い選択ではないと考えて、東大の博士課程を中退し、かねてより興味のあった機械学習やプログラミングの勉強を始める事にしたのです。

当時の指導教授には石油関係の仕事も紹介してもらったのですが、より多くの勉強時間を確保するために、英会話の教師として働きながら、機械学習やプログラミングの勉強を続ける事にしました。

機械学習やプログラミングはどのように勉強したのですか?

機械学習に関しては、まずは無料オンライン学習サイトのCouseraで受講できるMachine Learningから勉強を始めました。この講座は、AI研究の第一人者として知られるスタンフォード大のアンドリュー・エン博士による講座で、機械学習の理論を体系的に学べます。ただ、この講座は理論がメインで、コーディングは含まれていません。

(cousera)

私が勉強した2017年当時は、この講座は初学者にとってのスタンダードでしたが、今は、Udacity など機械学習の理論とコーディング両方を学べるものも出てきてますね。これからの時代は、すべてのエンジニアにとって、機械学習の最低限の知識は必要になっていくと思うので、自分にあった機械学習の講座を受講してみると良いかも知れません。

その後、GoogleのTensorFlowを使ってモデルを作ってみたり、パイソンの機械学習の古典的なライブラリを使ってみたりしました。

私は、将来的にはAIエンジニアとして働きたいと考えているのですが、まずはソフトウェアエンジニアとしての経験を積むべきだと考えて、WEB開発の勉強も並行して行っていました。

まず基本的な知識(HTML、CSS、JavaScript)を学んだあとに、サーバーサイド(Djangoを使用したバックエンド開発)とフロントエンドのフレームワーク(React.js)、そして展開(性的サイトホスティング、及びHeroku)の勉強をしました。その後に、これらの技術を使用して、個人プロジェクトをいくつか開発しました

その後のキャリアについて教えて下さい。

現在は、WEB制作などの受託開発を手掛ける会社で、WEBエンジニアとして働いています。受託開発ではプロジェクト毎に様々な事が勉強できるので、とても恵まれています。また、サービスの品質管理を徹底しなければならないので、良い意味でのプレッシャーがあり、自分の成長に繋がっていると実感します。

今後AIエンジニアとしてのキャリアも考えているのですか?

現在は、会社の業務に集中していますが、将来的には、チャットボットやデータ解析を行うAIを使ったサービスを開発するAIエンジニアとして働きたいと考えています。

GAFAなどのテックジャイアントは、非常に優れたAIのインフラ(AI as a service)で安価に提供しています。

例えばGoogleの提供するText-to-Speechは、人間とほとんど見分けがつかないレベルのなめらかな自然言語を生成できるエンジンを搭載しており、人々はこれを使って機械学習モデルの構築し、アプリケーションを作る事が出来ます。

そのため私は、GAFAのようなリードカンパニーの提供するAIインフラを利用して、アプリケーションを開発する、AIエンジニアとしての道を考えています。

(cloud.google.com )

短期間でエンジニアとして転身する事に成功したオメールさんですが、就職活動をする上でどんな準備をしていましたか?

エンジニアの採用面接ではコーディングのセッションがあるのが一般的であるため、事前にAtCoderやHacker Rank、LeetCodeなどでコーディングの問題をこなしていたのが役に立ちました。

また、Githubでオープンソースプロジェクトに貢献した実績があれば、採用面接で役に立つと思います。私の場合は、以前の会社で作成したGraphQLコードジェネレータプラグインに貢献しました。

後は、一般論になりますが、ブログや自分のHPなどで発信する事も重要ですね。私はブログも少しやっており、「面接官が自分の名前を検索した時に何が出てくるのか?」という事は意識していました。

外国籍エンジニアという視点から日本の労働環境はどう思いますか?

日本人は、チームが団結して効率的にオペレーションを遂行する事に優れていると思います。私は今でもクライアントワークの時は、言葉遣いや適切なビジネス用語の使い方などで緊張するのですが、上司や同僚がフィードバックをしてくれるのでとても助かっています。

アメリカに比べると日本のエンジニアの給料は低いと言われていますが、多くの国に比べると、一概に待遇が悪いとは思いません。向き不向きもあると思いますが、個人的には、外国籍エンジニアにとって、日本には良い環境が整っているのではないでしょうか。

今後もっとスキルアップをして、日本でエンジニアとして頑張っていきたいと思います。

ABOUT ME
アモニック・パスカル・ヒデキ
アモニック・パスカル・ヒデキ
フランス生まれ。2003年グランゼコールのENSEAを卒業、2006年東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻卒業。 東京工業大学大学院では古井古井研究室にて、音声認識や自然言語処理の研究に従事。卒業後、英系証券会社での勤務を経て、2007年に弟ジュリアンと共に外国籍エンジニアに特化した人材紹介会社・デカルトサーチ合同会社を設立。日本のIT業界を盛り上げるために、そしてエンジニアのキャリア支援のため日々、奮闘する。