アマゾンジャパンのPMに聞く「多国籍チームで活躍できる最強の人材の育て方」

世界最大のECサイトとなったAmazonでは、徹底した顧客視点や厳密な定量評価による意思決定が重視されていることが広く知られていますが、その人事評価の手法にも明確なポリシーがあると言われています。

今回は、Amazon JapanでProduct Managerを務めるA.M(仮名)さんに、Amazonの人事評価の方法や多国籍チームのマネージメントに加えて、Amazonで活躍できる人材の育成方法について語って頂きました。

最強のチームを作るAmazonの人事評価

-はじめにMさんの経歴を教えてください。

某旧帝大を卒業後、新卒で大手メーカーに就職し5年ほど勤務した後に、成長の機会を求めて、Amazon Japanに転職しました。現在は、Amazonの、とあるサービスのProduct Managerをしてます。私のビジネスチームには、PMは十人程いるのですが、PMの国籍はバラバラで、日本人の他、欧米、インド、中国、台湾出身者がいます。

-Amazonでは独自の人事評価システムがあると言われていますが、どのような評価基準があるのですか?

Amazonには「役職に関わらず全員がリーダーである」という考えのもとに作られた、OLP(Our Leadership Principles)という14個の評価項目があります。

人事評価の際には、数字目標に対しての結果に加えて、このOLPを元に、職場でのエピソードをインタビューしていくことで、その人のパフォーマンスを評価していくのですが、「再現性があり、論理的なアクションにより結果を残してきたか」「それらのアクションの結果が定量的に評価されているか」という点が重視されます。

「Our Leadership Principles」

1.Customer Obsession

2.Ownership

3.Invent and Simplify

4.Are Right, A Lot

5.Learn and Be Curious

6.Hire and Develop the Best

7.Insist on the Highest Standards

8.Think Big

9.Bias for Action

10.Frugality

11.Earn Trust

12.Dive Deep

13.Have Backbone; Disagree and Commit

14.Deliver Results

(出典:Amazon JAPAN)

論理と定量評価を徹底するAmazonのポリシー

-Amazonでは、人事評価以外でも定量評価を徹底していると聞きますが、それについて具体的に教えていただけますか?

ひとつ例を挙げますと、Amazonの会議では、大人数が参加する説明会を除き、原則としてパワーポイントは使用されません。どこまで厳密に禁止されているのかは分かりませんが、少なくとも私は、ほとんど見たことがありません。会議やプレゼンは、原則としてドキュメントベースで行われています。

例えば、新規プロジェクトの立案の際は、Narrative(ナラティブ)とよばれる新規プロジェクトのプランニングをA4用紙6枚以内で、文字と数字でまとめられることが求められます(資料の添付は可能)。

これには、プレゼンや説明の上手さではなく、プロジェクトを論理と数字で定量的に評価するという会社の方針があります。

過去にジェフ・ぺゾスが、コンサルタントを雇用した際に、論理と定量評価を重視するAmazonの企業文化にそぐわなかったため、それ以降、パワポは使われなくなったと言われています。そのため、Amazonでは、説明やプレゼンの上手さで錯覚資産を作るようなやり方は、一切評価対象になりません。

会議では、まずナラティブが配られ、参加者は15分程読み込みます。その後、質疑応答がおこなわれるのですが、極端な話、採決をとるだけの会議で質疑がなかったら、会議時間が1時間に設定されていたとしても、採決が終わり次第、そのまま会議も終了します。

-会議ではどのような質疑応答が行われるのですか?

質疑応答では、Customer Obsessionに関して重点的に聞かれることが多いですね。「その事業は本当にユーザー起点のプロジェクトなのか?」、「ユーザー体験をどう向上させるか?」といった軸で質問することで、顧客視点がぶれていないかを評価します。

例えば「新しい倉庫を建てましょう」という提案があったとしたら、立案者は、その倉庫を建てることで「配送時間は平均でどれだけ短くなるのか」、「当日中に配送が完了するケースがどれくらいの割合で増えるのか」、「その結果、どれくらい売上増につながるのか」といったことを定量的に説明する責任があります。

定量評価をしずらいプロジェクトに関しては、いくつか候補となり得るKPIを仮説として立てておいて、検証・軌道修正をしていくというアプローチが取られます。Amazonでは2way door decision を重視しており、仮に失敗したとしても後戻りできる施策ならば、定量評価が難しいプロジェクトでも承認されることがあります。

Amazon入社の門番・Bar Raiserとは

-Amazonでは、優秀な人材を確保するために、どのような採用プロセスが取られているのですか?

Amazonでは、人事が採用の主体となるわけではなく、候補者の直属の上司となる人間がHiring Managerとなり、採用チームを組成し、候補者を面接するのですが、採用チームとは別に、Bar Raiserという社内資格を持った人間が最終選考に参加します。

Bar Raiserとは、その名の通りバー(採用基準)を上げることであり、採用基準を維持する役目を担います。日本支社には50名ほどのBar Raiserの資格保有者がいます。

Hiring Managerは、すぐにでも人が欲しいと思っているため、採用基準が甘くなりがちなのです。Bar Raiserは、第三者の視点から客観的に候補者を評価していきます。Hiring Maganerがどんなにその候補者の採用を推進しても、Bar RaiserがNoと言えば採用には至りません。

私もBar Raiserの資格を持っているので、ハイアリングマネージャーとはぶつかることが多く、度々喧嘩のような意見のぶつかり合いになります(笑)。しかし、ハイアリングマネージャーがどんなに忙しくて人手が足りなかったとしても、適切にエビデンスレベルを評価出来ていなかったら、Bar Rasierとしては、承認することは出来ないのです。

ただ、このようにOLP各項目を厳密に定量評価していく評価方法に関しては、議論もあります。Amazonの評価方法では「天才的な技術者ではあるけれど、コミュニケーションに難がある」といった人材のような、一つの分野に突出したような人材は評価されづらいため、本来採用すべきであった人材を取りこぼしているということはあるのかも知れません。

ユーザー体験向上の重要性を説く1999年当時のジェフ・べゾス

Amazonで活躍できる人材とは

アマゾンジャパン

-Amazonではどんな人材が評価され、活躍するのでしょうか?

先ほど紹介したOLPの背景には、役職に関わらず、Amazon社員は全員がリーダーであるという考えがあります。

そのため、例え相手が上司であっても、自分が正しいと思った時は、論理的、かつ定量的にはっきりと意見することが重要な評価指標となります。

どんなに目上の相手でも、はっきりと主張できなければ、決して評価されません。日本では、主張しすぎると叩かれたり、ネガティブな印象がついてしまうといった風潮がありますが、Amazonのような多国籍チームでは、「察するという文化」は通用しないので、積極的に主張することが求められます。

また、自分がギリギリ出来ないという仕事に対して、臆せず、積極的に飛び込んでいける人は成長速度も速いため活躍できますね。

-所謂、社内政治の上手さはAmazonでも重要なのでしょうか?

重要だと思います。「Amazonで評価されるのはどういう人間なのか」を定義して、キーパーソンとなる意思決定者に対し、上手く根回しできる人は、昇進も早いという傾向はあると思います。

私は、それを政治力と呼んでいますが、論理と定量評価を重視するAmazonと言えども、結局のところ組織を作るのは人間なので、昇進という観点で考えると、政治力は重要です。ただ、日系企業とは政治のHow to Playに違いはあります。

多国籍チームをマネージメントする方法

-Amazonのような多国籍のチームをマネージメントする際に心がけていることは何ですか?

それぞれ異なる文化や宗教的背景をもつ多国籍チームをマネージメントする上で重要なのは、スコーピング(責任範囲の定義)とゴールを明確にすることです。

結局、会社組織において求められることは「あなたの求められている仕事はこれです。目的達成のために最短距離で走りなさい。」ということに尽きます。

多国籍チームでは、文化の違いがあるということを認知することは重要ですし、それが原因で問題が起きた時にはアドバイスはしますが、それを忖度したり、察するべきだというのは感覚的な仕事の進め方であり、ビジネスマンとしてあるべき姿ではないと思っています。

日本人だけのチームでは、お互いが何となく”察し合い”をすることで、スコーピングが曖昧になっていくということが起こりがちですが、周りが気を遣い責任範囲を超えてサポートすることで、結果的にスコーピングが曖昧になってしまっては、長期的には何の成果も残りません。

パフォーマンスが良くない人を、周囲が察してサポートしたとしても、その人を正確に評価することが出来ませんし、その人の上司が問題を認識しないまま放置されてしまうため、組織としてもあるべき姿とは言えません。

そのため、私は、何か助けを求められた時は「こっちで手伝うことはできますが、まずは上司に相談し、責任範囲を再定義してからにして下さい。」と言っています。

ただ、”察し合い”の文化を許容しないからといって、放置するわけではありません。私はマネージャーとして、傾聴の姿勢は重視しており、毎週、部下全員と1on1を行っています。

Amazonで活躍できる人材を育てるということ

-Mさんは、部下の育成について、どのようなことを心がけていますか?

まず、その人の強みを伸ばすような仕事をアサインすることを心がけていますが、それに加え、その人が「普通にやったらギリギリできないような仕事」をアサインすることも心がけています。

結局のところ、人間を成長させるのは、苦労した後に、それを乗り越えたという経験です。その人が後々、「なんであんなに辛かったのか分からない」と言うようになったら成長の証です。

短期的には「こんな大変な仕事降りやがって」と、もの凄く恨まれるのですが、中長期で見ると、これまで結構な人数から後々、感謝されてきたので、自分としても嬉しいですし、多国籍チームの中で活躍する人間を育てられたと達成感を感じる瞬間です。

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