コラム

内閣府主導ムーンショット型研究開発制度「破壊的イノベーションを創出せよ」

ムーンショット計画

皆さんこんにちは。皆さんはムーンショット型研究開発制度についてご存知ですか?2018年に内閣府により創設されたムーンショット型研究開発制度は、日本における破壊的イノベーションの創出を目指して発足しました。

 「ムーンショット型研究開発制度は、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を、司令塔たる総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の下、関係省庁が一体となって推進する新たな制度です。」

内閣府ムーンショット型研究開発制度

ムーンショット型研究開発制度は、最先端の技術の研究開発を最長で10年間支援するもので、平成30年度補正予算で1,000億円を計上し基金が造成されており、令和元年度補正予算では、150億円が計上されています。

ムーンショット
破壊的イノベーション創出に向けた挑戦

ムーンショット型研究開発制度は、各分野の第一人者が参画する、産官学一体の大規模なプロジェクトであるため、先端技術のトレンドへのキャッチアップやGR(ガバメントリレーション)の構築のためにも、是非、把握して頂きたいと思います。

ムーンショット型研究開発制度の野心的な目標

内閣府はムーンショット型研究開発制度では、以下の野心的な目標が掲げられています。

ムーンショット目標

1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現  

2.2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現  

3.2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現  

4.2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現  

5.2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出  

6.2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

「サイボーグ技術の実現(人間拡張技術)」「ほぼ全ての人のほぼ全ての行為と体験をアバター経由で実現」といった内容を見てみると、あまりにも大胆なビジョンであるため、眉をひそめる人や、政府主導でイノベーションを起こせるものかと訝しむ人もいるかも知れません。

そのような批判的な見方は重要なのですが、政府が少々大げさな目標を掲げ、ビッグピクチャーを描き主導すること自体は、国際的には政府の重要な役割のひとつとして見做されています。

中国の「中国製造2025」や韓国の「AI国家戦略」などを見ても分かるように、中国や韓国は、政府が壮大な計画を掲げ、産業を後押しすることで、これまで大きな成果を上げてきました。少なくとも「パクッて安く作る」だけだった(ように見えた)かつての隣国の姿はもうそこにはありません。

ムーンショット型研究開発制度の検討状況についてムーンショット型研究開発制度の創造を見ると、米国の国防高等研究計画局(DARPA)のモデルやEUの欧州イノベーション会議(EIC)のモデルを参考として、研究開発制度の他、規制制度や公共調達などの関連施策を整備していく計画が見受けられます。

ムーンショット
ムーンショット型研究開発制度の創造

ムーンショット国際シンポジウム

「ムーンショット国際シンポジウム」は、内閣府、科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって、ムーンショット型研究開発制度の運営方法及びムーンショット目標を議論するために2019年12月17日及び18日に開催されました。

第一回ムーンショット国際シンポジウムでは、ソフトバンクグループの孫正義氏による基調講演のほか、各領域の第一人者たちによるプレゼンテーションとディスカッションを通じて、先端技術の知見が共有されました。

その中で興味深いセッションをいくつか紹介したいと思います。

人の持つ能力の向上・拡張等による「誰もが夢を追求できる社会の実現」

2040年までに、ほぼすべてのほぼすべての行為と体験をアバター経由で実現、2050年までにサイボーグ化技術の実現(人間拡張技術)といった目標に向けて、北野宏明氏(ソニーコンピュータエンタテインメント研究所代表取締役社長兼所長)稲見昌彦氏(東京大学 先端科学技術研究センター教授)らにより、ロボットやコンピュータと生体との融合、ブレイン・マシン・インターフェースの実現に関して議論が行われました。

Moonshot International Symposium -WG1 Introductory

AIとロボットの共進化によるフロンティアの開拓

2035年までに、宇宙空間で稼働する高機能・多自由度ロボット・人工衛星群の開発、2040年までに農林水産業の完全自動化を実現、建設工事の完全無人化の実現、2050年までにノーベル賞級の発見を自律的に行うAI&ロボットシステムの開発といった目標の実現に向けて、福田敏男氏(名城大学理工学部教授)や笠原博徳氏(早稲田大学理工学術院教授)により、AIが自律的に制御を行うロボットの開発および活用領域の拡大について議論が行われました。

Moonshot International Symposium -WG3 Introductory

また、ムーンショット国際シンポジウムには、民間企業も出展しており、世界に誇るコア技術をもった日本企業の数々が出展しており、見ているだけでも心が躍ります。

境界線を越えるサイボーグ「MELTANT-α」

ムーンショット国際シンポジウムに出展されたMELTIN社の開発するMELTANT-αは、人の手をリアルタイムかつ正確に生体模倣する世界初の技術を搭載するアバターロボットであり、身体の制約を解放する技術として世界的に注目を集めています。

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MELTANT-α
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MELTANT-α

MELTANT-αは、キャップの開け閉めや、卵を割らずに掴むといった精巧な動きを遠隔操作することが可能で、操作者の入力に反応するまでの時間は約0.02秒。地球の裏側からも正確な操作が可能な世界唯一のロボットハンドを持つMELTANT-αは、様々な産業への応用が期待されている他、身体を限界を超え人間の創造性を無限に拡張するテクノロジーとして注目されています。

今後も要注目のムーンショット型研究開発制度

ムーンショット

ムーンショット型研究開発制度はまだまだ始まったばかりで、縦割り行政を脱却した横断的なマネージメントや産官学の建設的な連携という点で課題もありますが、基礎研究や先端技術に対して長期的に支援していく取り組みは、社会的には非常に重要な意味を持ちます。

先端技術のトレンドにキャッチアップするためにも、ガバメントリレーションの構築のためにも、テック業界に携わる方には是非、チェックして頂きたいと思います。

ムーンショット国際シンポジウム